「アンリトン・ルール」というのは、もともとアメリカのメジャーリーグベースボールで使われている言葉です。日本語で表現すると「暗黙の了解」という感じが近いかもしれません。
誰か親切な人に、「こういう場合はこうするほうがいいよ」と、教えてもらえるのならば問題はなくなるのですが、残念ながら、「当然こんなことわかっているよね?」「なんで知らないの?」となることの方が多いかもしれません。
実は、キャバ嬢にもそんな「アンリトン・ルール」のようなものがあります。
キャバ嬢が、他のキャストの指名客の席につくことを、「ヘルプ」といいます。新人のキャバ嬢は、まず「ヘルプ」のお仕事をすることから始まります。
そして、キャバ嬢の「アンリトン・ルール」は、主にこのヘルプのお仕事の中にあります。
ヘルプの場合、お客さんに名刺を渡したり、連絡先を教えることはNG行為とされています。
基本的にヘルプというのは文字通り、他のキャストの指名客の「お手伝い」であって、メインではなくメインの女の子の「サポートのお仕事」なのです。そのためお客さんに名刺を渡したり、連絡先を教えたりすることは、「指名客を奪う行為」と受け取られる可能性があります。
「こっそりやれば大丈夫」「ばれなきゃ平気」と、軽い気持ちでやってしまっただけなのに指名キャストやお店のスタッフにチェックされてしまい、退店に追い込まれる女の子もいます。
お客さんの中には、ヘルプの女の子の連絡先を聞いてくる人もいるかもしれませんが、丁重にお断りしましょう。「ルールだから教えられない」というよりも、「浮気ですか~○○さんに言いつけますよ」くらいのニュアンスの方が良いかもしれません。
ヘルプでついた席のお客さんは他のキャストの指名客のため、必要以上に密着することは「指名客を奪う行為」とみなされます。
キャバクラなんだから、お客さんにくっついた方がお客さんも喜ぶんじゃないの?と、思われるかもしれませんが、後から指名キャストに目をつけられて、お店に居づらくなる可能性があります。
ヘルプ席でお客さんがアプローチをしてきた場合は、「○○さんに叱られちゃいますよ」と、上手にかわすのもキャバ嬢のテクニックのひとつです。
ヘルプ席では、どんなに喉が乾いても自分からドリンクをおねだりすることはNG行為です。
お客さんから「何か飲みなよ」と勧められたとしても一旦はお断りして、それでも「何か飲みなよ」と勧められるようであれば、指名キャストに「いいですか」と、断りを入れてからドリンクを頼むようにしましょう。
ドリンクが来たら、必ずお客さんと指名キャストにお礼を言ってください。それから、席を離れる前にはドリンクをすべて飲み干すのも忘れずに。
ドリンクを残すことで、「失礼な女の子」というイメージになってしまうためです。
ヘルプ席で指名キャストの話題というのは、最も盛り上がりやすい話題でもあるのですが、避けたほうが良い話題もあります。
キャバ嬢には、昼間に別のお仕事をしている人もいますし、彼氏がいる女の子もいますし、中には家庭を持っている人もいます。
そのため、ヘルプ席では、指名キャストの個人情報を話すのは重大なNG行為です。
本名や住所や最寄駅、家族構成や彼氏の有無、昼間のお仕事などは、お客さんに聞かれても、「そういう話はしたことがないので、わかりません」という感じで、絶対に言わないようにしましょう。
指名キャストの営業成績や、お給料の金額、給料システムに関しても、お客さんに話すのはNGです。
本当は売れっ子なのに、「今月ノルマきついんだ」ということをお客さんに話して、より多くの売上を上げるように努力していることも考えられますので、絶対に話さないようにしましょう。
指名キャストのプライベートについても、お客さんに話すのはNGです。
例えばお客さんがデートに誘ったのに、「その日は別の予定があって…」とお断りしていることも考えられます。お客さんの夢や希望を壊さないようにしましょう。
盛り上がる話題の中でもダントツに盛り上がるのは、「そこにいない人の悪口」です。
確かに人の悪口は一時的に盛り上がるかもしれませんが、後から「あの子、○○ちゃんのこと、嫌いなのかな?」「え、何かあったの」「実は…」と、指名キャストの耳に入る可能性が充分にあります。
指名キャストの話題では、「指名キャストを褒める」ことだけに徹したほうがトラブルを避けるためにも有効です。
キャバ嬢のアンリトン・ルールとは、ヘルプ席の時に、「指名キャストの誤解を招く好意をしない」ことです。それがきっかけとして、お店を辞めることになったキャバ嬢も一定数います。
楽しく働くためにも、お客さんはもちろん他のキャストやスタッフとの関係にも気遣いを忘れないようにしてください。